あの日あの時 ~SC27 思わぬ刺客 編~ [あの日あの時]
ある日の事,大学から帰宅すると大声が家の二階から聞こえてきた
良く見ると母と娘さんが口論している
娘さんは、中学2年生のジルで下から3番目の娘
ジルが大声で叫ぶ声の単語に寅の名前があった、、、、、!
<!>
ん?自分の事か?
と思い恐る恐る聞いていると、、、、、
何やら寅が原因で揉めているみたいだった!
ジルは母に泣きながら訴えかけていた
母は娘を大声で叱る様に言いつけていた
寅はショックだった
まさか寅が原因で揉めているとは、、、、
確かに寅は一番下のアンジェラや、そのすぐ上のサラとばかり遊んでいた
ジルのお姉さんのシンディーは、もう大学生で自分の事で忙しい
まだ中学生のジルは中学生で思春期の一番難しい年頃。
彼女は赤い髪の毛を気にしていて容姿も、、、、だった
彼女も寅と距離を置いていたのか、寅も彼女とあまり打ち明けた感じではなかった
ジルは寅に対してストレスを感じていたのかも知れない
寅が東洋人で、英語も満足に会話出来ず、突然の来訪で家族だけのひとときを壊され
自分のペースが掴めず、自分だけ置いていかれた感じが観ていて取れた
そのイライラを母親にぶつけていたのだろう
でも、寅は知ってしまった、、、、、、
<自分は、この家族に必要とされていないんだ>
<家族の一人だけでも寅の事を良し思わない人がいたら、この家を去ろう>
寅は初めてホストファミリーが家族の一員と認めてくれた夜、一人そう誓った
寅は日本人があまりにも多いこの大学の事を悩んでいた最中だった
その日の夜、ある一つの決意が生まれた
<この街を出よう!>
大学を転校(トランスファー)して、また一からやり直そう!
そう誓った
家族の一人にでも疎まれていると感じたら、それは家族の一員ではない
そして、また新たな新天地で自分の人生を切り開いて行こうと思った
次の日、ホストの父と母を呼び、こう言った
<来月から大学を変えようと思うんだ、今までありがとうございました>
以前から大学には日本人が多すぎて勉強にならないと話していたので
ホストの両親は残念そうだったが、寅の意見を尊重してくれた
アンジェラには言わないでくれとも言った
言ったら最後、泣いて泣いて泣きわめくのは目に見えていたからだ
彼女だけには告げず、そっと知らない内にいなくなろう、、、、
そう寅は決めた
両親も後の事は任せろと言った
来たばっかりの頃は、カバン2つで来たのが、今ではダンボール箱7つ位にまで増えてしまった
バレない様にガレージにしまっておいた
学期がファイナルテストを終え、キャンパスの芝生を裸足で歩いていると
偶然中国人のサラにバッタリ逢った
芝生の上に座り込み、今までの事を全て話した
<来月から、この街を去る事にしたんだ。 今までありがとう!>
すると彼女の目からは大粒の涙が流れ落ちた
<あなたはキャンパスにいる大勢の日本人達とは違う!>
<ちゃんと自分の意思を持ち、親に頼らず、自分の人生を切り開いて行こうとしてる>
<そう言う人を引き留めたりしたくないし、あなたの事を私は誇りに思う>
<でも、とても残念だけど、、、、あなたと過ごした楽しかった日々は私の宝物よ>
<私はあなたが好き! そしてこれからもずっと!>
<たまには戻って来てね?>
寅は返事をする代わりに彼女を力を込めて抱き寄せて言った
< I am Proud of You >
後で分かった話だが、ボートで一緒だったサラに想いを寄せている
日本人のH君に告白されたが、彼女に袖にされたらしく
その後、サラは誰とも付き合わず、ずっとシングルだったらしい、、、、
寅は、あの明るくてチャーミングなサラの事だから
誰かと付き合っているものだとばかり思っていた
彼女と別れ、日本語教師に寅を採用してくれた人に挨拶をしに行った
<実は大学をトランスファーするので来季からの日本語教師の件は辞退します>
彼女は驚きを隠せずにいた様だったが
<分かりました。 あなたに次いで2番目の彼にお願いするわ>
彼女は理解が早かった
そして空手の一番弟子のS君の所に挨拶しに行った
大きな身体は変わらなかったが、声も大きかった
<本当ですか~~っ?>
彼の日本人の彼女が、その声の大きさにビックリしていた
彼女は同じ大学生で、とても別嬪さんでS君が猛アタックして付き合い始めたらしい
<寅さん、、、、、実は僕達も転校するんです>
<えっ? どこに>
<DEXY COLLEGE デキシーカレッジです>
寅の行くプロボの方向とは真逆の方だった
<そうか、、、頑張れよ!>
<ハイっ! たまには稽古付けて頂いてヨロシイですか?>
<OK 強くなって彼女を守れなくちゃダメだぞ?>
大柄なS君が綺麗な彼女の方を向いて小さくなった
彼女は天使の様な笑顔で彼に微笑んでいた
<寅さん、引越の際には僕のオンボロ車ですが、送らせて頂きます>
<そうか、、、、その時は頼む>
そう言って寅は、ソコを離れた
しかし、わずか4ケ月とは言え、数多くの思い出があり過ぎた
数多くの思い出を色々思い出しながら一歩一歩芝生を踏みしめる様にして歩くのだった
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